2002.10.30発行 vol.120
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■特集企画■「きゃりあ・ぷれす」第2フェーズに向けて

 ◆「きゃりあ・ぷれす」これまでとこれから<フェーズ2宣言>
             ……発行人・宮崎郁子
 ◆考え合い、動き合う、ワークライフブレンド志向のメディアへ
             ……コラボレーション編集スタッフ・木村麻紀 …………………………………………………………………………………………

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      「きゃりあ・ぷれす」第2フェーズに向けて
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 ◆「きゃりあ・ぷれす」これまでとこれから<フェーズ2宣言>
             ……発行人・宮崎郁子
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「きゃりあ・ぷれす」もおかげさまで創刊4年半を経過し、5年目に突入し
ようとしています。ふりかえるとこの期間は、ちょうど千年紀の節目、世紀
の節目を含み、日本のみならず社会全体のあり様がさまざまに変化し始めた
時期と重なっているように思います。
「きゃりあ・ぷれす」もそれに呼応するかのように少しずつ変化してきまし
た。

そしていま、第2フェーズに入りつつあると感じています。
いまご登録いただいている読者の方々が、どのくらいの期間読んでくださっ
ているのかはわからないのですが、今回、サイトリニューアルを行なうにあ
たり、あらためて「きゃりあ・ぷれす」のこれまでを整理し、これからの方
向性を考えてみる必要性があると感じました。

<これまでの流れ>

●創刊当初の「きゃりあ・ぷれす」のスタンスは、派遣を始めとする多様な
 働き方を自分のライフスタイルやライフステージによって自由に選びとっ
 て、自分なりのキャリアプランニングを組み立てることができるようなノ
 ウハウや情報を読者の方々と共有していきたいというものでした。
 メールマガジンというメディアについても、(その無料配信システムが提
 供されるようになってそれほど間がなかったこともあり)ほとんど事前情
 報をもたずスタートしました。

●スタートしてすぐに、私たちはメールマガジンというメディアのこれまで
 のメディアにない大きな可能性と手ごたえを感じました。それは読者の方
 からのリアクションの熱さと即時性、そしてこれまでのメディアではかな
 り形式的だった双方向性のリアルさです。

●「きゃりあ・ぷれす」への投稿や読者座談会、オフ会を通じて、『ライフ
 /バランスセミナー』をスタートさせたパクさん、起業を支援するNPO
 キープラネット代表理事の川野さん、メールマガジン『いろんな働くママ
 たち』を発行するEmabuさんなどなど、多くの読者の方と出会うこと
 ができました。その方たちは全員、もともとその筋では有名な方というよ
 りは、まさにいま動き出している、動き出そうとしているというライブ感
 あふれた方たちでした。「きゃりあ・ぷれす」はそういう読者の方々から
 多くのことを学び、新たな展開への活力をいただいてきました。こうした
 経験を通じてメールマガジンというメディアは、情報発信者と受信者とい
 うこれまでの情報流通の構図を打ちこわす画期的なメディアであるという
 確信が序々に強まってきました。

●また、『新しい家族のための経済学』の著者である経済学者大沢真知子さ
 んとお会いできたのも、メールマガジンというメディアの力でした。大沢
 さんは読者の方々からのたくさんのメールにことのほか注目され、ブレー
 ンにというお願いを快諾してくださいました。それ以来、ご寄稿やオフ会
 パネリストとしてのご参加など多大なご協力をいただいています。

●こうした経緯の中で、メールマガジン「きゃりあ・ぷれす」の方向性は、
 従来の働く女性向けの雑誌などとは全く違うものであるべきだというイメ
 ージが明確になってきました。

●送り手と受け手がたて方向ではなく、水平方向にネットワークするメディ
 ア。そして、送り手と受け手という垣根を越えた双方向の情報流通。さら
 に、情報にとどまらずさまざまなアクションが相乗作用を生み出し、参加
 する人々が編集側と読者という立場にかかわりなく活性化していくことを
 可能にするメディア。という理想像が明確になってきたのです。

●編集についても、発行元である(株)パンゲアの社員だけでなく、コラボ
 レーション編集スタッフの参加も実現し、さらに編集やアクションの活性
 化が進んでいます。

<そしてこれから>

●実は、1999年の12月に発行した第40号<新ミレニアムの働き方を
 考える>では、すでに「きゃりあ・ぷれす」のバックボーンとなる考え方
 についてふれています。
 ( http://www.pangea.jp/c-press/melmaga/data/991222.html
 その時から3年がすぎようとしていますが、これまでの社会のいきづまり
 はますます顕著に露呈していますし、一方そのオルタナティブとなりうる
 可能性を秘めた女性たちを中心としたさまざまな活動は、ますます広がり
 を見せています。

●第40号でもとりあげたJ.ロバートソン氏の著書『未来の仕事』を原案
 として、これまでの価値観の延長としての方向性と、そのオルタナティブ
 として考えられる方向性を別表に整理してみました。
 (「2つの価値観と方向性」表
   http://www.pangea.jp/minohodoism/chart.html

●「きゃりあ・ぷれす」は当然ながらオルタナティブの方向性をめざす訳で
 すが、その中で、とりわけキーワードとして設定したいのは以下の5点で
 す。
 ■「支配と依存の関係」のオルタナティブとしての『自立/自己依存』
 ■「ヒエラルキー」に対して『ネットワーク』
 ■「イデオロギー的」に対して『身体感覚的』
 ■「組織人としての個人と生活者としての個人の分裂」に対して『自己統
  一性』
 ■「人間支配的」のオルタナティブとしての『環境共生的』

●仕事のあり方はダイレクトに社会のあり方につながっています。これまで
 のように社会をこう変えるというイデオロギー的変革でなく、今のところ
 主に女性に現れている身体感覚的価値観や危機感が、天職をめざすような
 新たな活動を生み、同時多発的なさまざまな活動がある広がりとネットワ
 ークを生んだ時、いっぺんに社会が変わる。そんな変革です。誰も方向性
 をさし示したり、リーダーとしてひっぱったりしないのに、なぜか方向は
 同じです。それは女性のDNAというか、更にいってしまえば、地球上の
 生命としてのDNAにみちびかれているからではないでしょうか。ただ、
 これまでの枠組に組みこまれていない分、また生命というものに少し近い
 分女性の方がDNAからの声をより明確に感じることができ、より強い牽
 引力を感じ、枠にしばられることなく行動にむすびついているということ
 ではないかと思うのです。

●「きゃりあ・ぷれす」の第2フェーズでは、そうしたオルタナティブな社
 会をめざす同時多発的な活動や指向性に注目し、応援し、そしてネットワ
 ークすることをめざしていきたいと考えています。

●メールマガジンのキャッチフレーズも「働く女性のためのキャリアプラン
 ニング情報誌」から『仕事と社会のこれからを考えるリポート&アクショ
 ンマガジン』へと発展させ、改変することとしました。

●とはいえ、これまでと内容がガラリと変わるわけではありません。今号で
 言っている価値観的な話は、常にバックボーンとして底流にある訳ですが、
 これからも「きゃりあ・ぷれす」では、実際のキャリアアップやキャリア
 プランニングに役立つ情報も発信しながら、これまで以上に読者の方々が
 主体となって、読者の方々の力がより発揮できるようなリポートやアクシ
 ョンを心がけていきたいと考えているのです。
 第2フェーズにはいった「きゃりあ・ぷれす」をより一層よろしくお願い
 致します。積極的なリアクション、ご参加をお待ちしております。

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 ◆考え合い、動き合う、ワークライフブレンド志向のメディアへ
             ……コラボレーション編集スタッフ・木村麻紀
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「東京電力の原発機器損傷隠し」と「母親の育児不安」──。次々と明るみ
に出る大企業の不祥事と1つ1つの小さな家庭での日常は、一見すると何の
関係性もありません。では、それぞれは何故起きてしまうのでしょうか?

組織に入って「ここではこういう仕事をしなければダメ」と見なされるがん
じがらめの構造に身を置くと、自分がやったこと=仕事に対する愛着や満足
感が失われがちになります。そうなると、人はいくらでもいい加減なことを
し、手抜きをし、しいては悪いことまでできるようになってしまうのでしょ
う。しかし、例えば自分がやったことが社会にどのような結果をもたらすか
ということを実際に自分の目で確かめられるような仕事のやり方、外部の人
人とのつながり方ができるようになれば、決してあいまいで無責任な態度は
取れなくなるはずです。それは、自分に対する背信行為になるからです。

私たちは、両親を含めてこれまで自分の周りにいてくれた全ての人たちから
何らかの形で育てられてきたからこそ今があると言えないでしょうか? な
らば、母親だけが子供と向き合うことで苦しむ必要はないはずです。でも、
何故母親だけか…。「子育ては母親がやるもの」と身近な人を無意識のうち
に縛り付けていないだろうか。母親自身、同じ思いを抱いている人々と一緒
に不安の根源を正してみようとしたことはあるだろうか。

こうして2つの事象が何故起きるのかを私なりに考えた時、私たちが社会的
規範として与えられた役割に押し留められ、人間が持つ本来の多面的な可能
性を発揮することが阻害されてきた社会によってもたらされた結末と思えて
なりませんでした。

では、結末を悲劇に終わらせないために私たちができることはないか?私、
そして第2フェーズを迎えた「きゃりあぷれす」は、その答えを「自立」と
「ネットワーク」に見い出しました。

自立というのは、必ずしも金銭的な面だけではありません。むしろ、自分は
何をしようとしている人間なのか、自分が今生きる社会はどのような構造な
のかということを、1人ではなく上下や利害関係にとらわれない複数の人間
が集まって「考え合う」。すると、これまで当然視していたことが実はそう
でもなかったということに気付いて、それをどうにかして自分がこうありた
いと思う方向に変えようと皆が「動き合う」。そして、このような同時多発
的な動く主体がネットワークとして「重なり合う」ことで、互いの強みを倍
化させ、互いの弱みを補う──。

どうでしょう? 少しイメージが涌いてきましたか? 例えば、私は会社員
だから、主婦だから、男だから、女だから、日本人だからという一面的な役
割人間として考えたり行動したりするのではなく、会社員でもあり、主婦で
もあり、男でもあり、女でもあり、日本人でもある多面体人間としての自分
が考えたり行動してみるんです。私たちはこうした一連の自立とネットワー
クを軸にした仕事や社会のあり方を、仕事と私生活にあえて区別を設けるこ
とで成り立ってきたこれまでのあり方と対比させる意味で、仕事を含めたト
ータルな人生を自分の中で統一感あふれるものにしようとする営み=ワーク
ライフブレンド と名付けて、これから私たちが目指すべき未来の姿として
定めてみました。

第2フェーズを迎えた「きゃりあぷれす」は、まずはこのワークライフブレ
ンドにつながる日本や世界の様々な動きをレポートしながら、読者の皆さん
とともに考え合っていきたいと思っています。と同時に、これまでもやって
きた数々のセミナー以外にも、ワークライフブレンドにつながる事業や活動
を実際にやるところまで踏み込んでいきたいと考えています。読者の皆さん
には、きゃりあぷれすを読んでいただくことはもちろん、私たちの投げる球
を受けてどしどし投げ返していただきたいです。そして一緒にプレーするよ
うになれば、その方々とは一緒になってワークライフブレンドなあり方に近
づくというハッピーエンドが待ち受けていると確信しています。

最後に一つ。第2フェーズを迎えた「きゃりあぷれす」としてどうしてもや
りたい、やらなければならないと考えていることがあります。それは、「き
ゃりあ・ぷれす」がこれまで取り組めなかった、地方の読者の皆さんを起点
とした地方との連携です。シリーズ「仕事と社会のこれからを考える」での
片山輝雄さんのインタビューに共鳴した読者が集まって東京で始まった「天
職シーカーズの会」に対して、札幌、名古屋、大阪、香川の読者の方々から
もこうした集いを当地でぜひ実現して欲しいという声をいただいております。
東京だけでこじんまりすることを、私たちは良しとしておりません。ぜひ、
より多くの地域でワークライフブレンドを目指す動きを起こしたいと考えて
います。各地の皆さんには色々と一緒にやっていただくことになるかと思い
ますが、どうぞよろしくお願いします。ぜひ、楽しくやりましょうね。

考え合い、動き合うワークライフブレンド志向のメディアとして、第2フェ
ーズに入った「きゃりあぷれす」を愛してくださる方々の輪が少しづつ広が
りますように。