2004.11.10発行 vol.176
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■特集企画■「MINOHODOism」レポート vol.1

      ◆「MINOHODOism」に向けてのメッセージ    大沢真知子

      ◆「構想日本」加藤秀樹代表訪問記        宮崎郁子

      ◆「きゃりあ・ぷれす」読者へのメッセージ    加藤秀樹
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        MINOHODOismに向けてのメッセージ
                         大沢真知子
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先日来特集しております「MINOHODOism」、みなさんは読んでいただけまし
たでしょうか?
どんな感想、ご意見をお持ちですか?

念のため、もう一度、内容を見ていただけるサイトはこちら。

●MINOHODOism とは
 < http://www.pangea.jp/minohodoism/toppage.html >

これについてのメッセージを本誌ブレーンの日本女子大学教授、大沢真知子
先生からいただきましたので、ご紹介いたします。
みなさまからもご意見、ご感想をいただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いします。


大沢真知子さんプロフィール
日本女子大学人間社会学部教授。産業構造審議会NPO部会委員。専門は労
働経済学。経済発展の中で女性の就業機会や結婚・家庭形成がどう変化して
いくのか、経済のグローバル化のなかで就業形態がどのように変化していく
のかを、国際比較の視点から研究している。内閣府男女共同参画会議の専門
調査会、厚生労働省のパートタイム労働研究会などの委員を務め、雇用をめ
ぐる制度や政策のあり方についても積極的な発言をしている。著書に『働き
方の未来−非典型労働の日米欧比較』(日本労働研究機構)『コミュニティ
ー・ビジネスの時代』(共著)(岩波書店)『働き方を変えて、暮らし方を
変えよう』(共著)(東京女性財団)『新しい家族のための経済学』(中公
新書)『経済変化と女子労働』(日本経済評論社)など多数。


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●何で今「MINOHODOism」なのか
                             大沢真知子
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いま日本の社会は大きな転換点に立っている。いままで正しいとおもってい
たことが本当に正しかったのかどうか、わからなくなってしまっている。経
済が成長することによって、いまより明日は確実によくなっていったから、
頑張ろう、努力しようとみんな思った。でも確実によくなるかわからないの
に、なぜ頑張るのか。努力しても結果がえられないとしたら、なぜ努力する
のか。

同じことが経済でもいえる。会社の予想将来成長率はどんどん低くなってい
る。どんなに頑張ったって、これ以上の成長はそう簡単には見込めない。

そんな時代をわたしたちはどうやって生きていったらいいのだろう。何を目
標にしたらいいのだろうか。いまわたしたちも社会も成長の壁に突き当たっ
て、次に何を目標にしたらいいのか、答えが出せないでいる。でもそれは、
いままでの価値観の延長線上で発想しているからではないのだろうか。グロ
ーバルエコノミズムをこれ以上追求しても無理だ。すでにいろいろな意味で
破たんしている。

そこで提案されているのが、MINOHODOismという別の価値観。自分自身にも
う一度戻ってみよう。自分が本当に好きなことや、自分の体が求めているも
の。それを否定しないで、見つめ続けると、そこに自分がしあわせになれる
きっかけやヒントがみつけられる。何か結果がえられるから頑張るんじゃな
くって、楽しいからやる。やりたいからやる。見返りを期待しないで、やり
続けると、それが自分の成長につながって、可能性が開かれていく。自分が
中心にあって、人との輪ができ、広がっていく。

MINOHODOismはそれほど新しい概念ではない。ヨーロッパでは90年代から
そういった概念をもとに新しい社会作りに取り組んでいる。自分の環境に目
を向け、自分の価値観を大切にする。そして、お金よりも時間や生活の質の
向上を求めていく生き方である。
 
そんな生き方がいま日本でも少しづつ支持を集めつつある。


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        「構想日本」加藤秀樹代表訪問記

                      発行人:宮崎郁子
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台風の狭間にすがすがしく晴れ渡った10月の昼下がり、「きゃりあ・ぷれ
す」編集部は、東京千代田区の「構想日本」のオフィスに加藤代表をお訪ね
しました。

「構想日本」というのは、“政策ベンチャー”を自称する、いかなる政党や
政治家、官庁、業界団体からも委託を受けない独立・非営利のネットワーク
型シンクタンクです。法人や個人会員の会費によって、自らの理念に基づい
た政策づくりを行ない、政党や議員に提言し、実現を働きかけています。

また、毎月行なわれている「J.I.フォーラム」では、さまざまなジャンル
の全国各地の“変革活動者”や研究者、政治家などによる変革に向けての議
論を、会員及び一般の方々に向けて公開しています。

「きゃりあ・ぷれす」では、特に「J.I.フォーラム」の多岐にわたるテー
マと根底に流れる「構想日本」の、あるいは加藤代表のともいえるかも知れ
ませんが、価値観や方向性に、私たちが標榜するMINOHODOism的なものを強
く感じ、是非いちどお会いしたいものだと常々思っていました。

本誌ブレーンでいらっしゃる大沢真知子先生にご相談したところ、以前
「構想日本」にいらした山谷さんをご紹介くださり、このたび、山谷さんの
ご尽力によって加藤代表にお会いすることができました。

加藤代表は、MINOHODOismの価値観チャートをご覧になり、「それほど外れ
てはいない」ということを仰ってくださり、「きゃりあ・ぷれす」読者には
働く女性が多いというお話をすると、「構想日本」の会員の方たちは男性が
圧倒的なので、女性にももっと政策の重要さを知ってもらえればと仰ってい
ました。

また、「きゃりあ・ぷれす」サイトと「構想日本」サイトを相互リンクする
ことを快諾してくださったのみならず、今後何か協力してやれることがあれ
ば、それも可能とのお話をいただきました。更に読者の皆さんに向けたメッ
セージもいただきましたのでここに掲載いたします。

「構想日本」の目指すところが、わかりやすく書かれた、松井孝典氏、櫻井
よしこ氏との共著「ひとりひとりが築く新しい社会システム」も是非お読み
ください。

◆ひとりひとりが築く新しい社会システム
http //www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/490059461X/careerpress-22/

加藤秀樹氏プロフィール
構想日本代表。大蔵省勤務を経て、97年4月、これからの日本に本当に必
要な政策を「民」の立場から立案・提言するため、非営利独立のシンクタン
ク「構想日本」を設立。裁量行政に歯止めをかける省庁設置法改正を皮切り
に、国、自治体へのバランスシート導入、道路公団民営化、年金制度改革な
ど、縦横無尽の射程から日本の変革をめざす。97年4月より、慶応義塾大
学総合政策学部教授を兼務。
編著書に『道路公団解体プラン』(文芸新書)、『アジア各国の経済・社会
システム』(東洋経済新報社)、『金融市場と地球環境』(ダイヤモンド社)
など。


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●「きゃりあ・ぷれす」読者へのメッセージ
                              加藤秀樹
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みなさん、はじめまして。構想日本というヘンな名前のNPOの代表をして
います加藤秀樹です。
 
構想日本は、非営利・独立の政策シンクタンクです。年金、医療、教育、行
政改革、三位一体改革などずいぶん多くの政策提言を行ってきていますが、
「生活」をしっかりふまえ、日本の将来のために何をすべきかを考えるとい
うことです。法案など具体的な形の政策を提言し、その実現のために活動し
ています。いずれの政党、業界、団体からも中立の立場で、会員によるサポ
ートの下で運営されており、法案や閣議決定に構想日本の考え方が反映され
るなど、具体的な実績もあげてきました。

しかし構想日本が考えている、改革の方向性はマスメディアで喧伝されてい
るものとは違います。

エコノミストや、経済ジャーナリズムは、勝ち組、負け組という言葉をこし
らえて、日本人よ、頑張らないと勝ち組に入れないゾ、みんなで頑張って勝
ち組になろうと連呼しています。しかし、10人いて1人が勝てば、9人は
負けたことになる。一つの尺度で勝ち負けを分けていると負け組のほうが圧
倒的に多くなってしまうのです。
これでは、「閉塞感」もイライラもなくならず、陰湿な犯罪もますます増え
るでしょう。大体、勝ち負けという言い方が貧しいですね。

もちろん、トコトン勝負に挑む人も必要です。そこに、進歩や創造もあるの
ですから。一方で、多くの人は、日々の生活に大いに満足したいと思ってい
る。若い世代の人は特にそうです。
 
私は、勝負に賭ける一部の人と、日々の生活をエンジョイしたい大多数の人
たちがお互いに敬意を払いながら棲み分け、しかも、固定化しない。そんな
世の中がいいと思っています。それは、ハイリスクとローリスク、ハイテク
とローテク、グローバルとローカル、そして大都市と小都市や田舎の棲み分
けと共存、だと思っています。
 
いわゆる小泉改革はこれらの前者、すなわちハイとグローバル中心だとすれ
ば、ローやローカルのほうはどうなるのでしょうか。教育や農業、環境など
の議論が十分行われず、専ら経済の面から、政策や制度が形づくられていく
のでは、多くの日本人は、ますますストレスとフラストレーションを感じる
ようになるでしょう。外国から見ても、魅力的な国には見えないと私は思い
ます。ここをなんとかするには、私たち自身が、マスメディアから溢れ出て
くる「大変だ」「負けるゾ」といった言葉に右往左往しないことが大切です。
簡単ではありませんが、これまで続けてきた勝ち負け式の偏差値主義あるい
は相対評価を、絶対評価、すなわち、自分の生活観を持ち、マイペースを守
るという方向に変えていかなければならない。こんなふうに考えながら、個
々の政策提言を行っております。

以上のような考え方が、「MINOHODOism」と相通じるものがありそうだとい
うことで、皆さんにメッセージを送る機会をいただいたのだと思います。
これをご縁にお付き合いいただけましたら幸いです。

構想日本の詳しい活動については、 http://www.kosonippon.org をご覧く
ださい。

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きます。

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ます。