2005.12.21発行 vol.203
--------------------------------------------------------------------
■特集企画■新しい年に向けて読みたいおすすめ本のご紹介

       ◆高田ケラー有子著
        「平らな国デンマーク」〜「幸福度」世界一の社会から〜
                    (NHK生活人新書)<その1>
…………………………………………………………………………………………

  ■□■                          ■□■
       新しい年に向けて読みたいおすすめ本のご紹介
        高田ケラー有子著 「平らな国デンマーク」
    〜「幸福度」世界一の社会から〜(NHK生活人新書)<その1>
  ■□■                          ■□■

  この本は、JMMのメールマガジンで連載されている高田ケラー有子さん
  のコラムをまとめたものです。JMMのメールマガジンには様々な海外か
  らのコラムが連載されていますが、その中で特に興味深く読んだもので
  した。
  まだ書籍化される前に、私は高田さんにメールを送りました。これに対
  し、高田さんは大変丁寧なお返事をくださり、その時初めて出版につい
  てのことを知りました。(高田さんのお返事は、金曜日発行の<その3>
  に掲載させていただきます。)その後一時帰国された際、高田さんと直
  接お会いしてお話する機会もいただき、ますますそのお人柄にひかれま
  した。
  今回は、この年末年始のお休みに是非読んでいただきたい本として、今
  日、明日、明後日と短めに3回に分けて「平らな国デンマーク」をご紹
  介します。


□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●「大きな政府」か「小さな政府」か、という不毛な論議
□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

近頃、政治の世界では「大きな政府」か「小さな政府」かということがひと
つの論点になっています。しかし、この論議はあまり意味がないと思います。
問題は「大きさ」でなく「質」ではないでしょうか。その「質」の論議を全
くないがしろにしての、ただ市場至上主義を善しとする「小さな政府」論は、
政府の怠慢を棚上げにした不毛な論議だと感じます。「怠慢な大きな政府」
か「怠慢な小さな政府」か、ということになりかねません。
まず、税金の使い方の「質」を問うことが重要だと思います。

この情況の中で、高田さんの「平らな国デンマーク」は、大きな示唆を与え
てくれます。言うまでもなくデンマークは、消費税25%、平均的所得税が
46%という高税率のいわゆる「大きな政府」の国です。にもかかわらず、
ロッテルダムのイラスムス大学の教授が毎年行なっている幸福度調査では、
2004年のデータとしてデンマークは、マルタとスイスに並んで幸福度が
世界一高い国と判定されているそうです。
この本を読んでも、税金が高い大きな政府でありながら、決して全体主義で
なく、個人や個性を大切にする国民の気風が感じられます。

この本を読んで特に感じることは、国民=納税者が、税金の使い方や国民の
代理者(決して代表者でなく代理者、ましてやお上などではなく)としての
政府をしっかりウォッチし、コントロールしているということです。(ちな
みに選挙の投票率は平均で80%だそうです。)その上で高い税金によって
得られる様々な生活上のメリットを実感し、享受している姿が浮かび上がり
ます。


□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●「幸せな社会」をイメージするために
□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

高田さんは、子育てを通じてさまざまなことを息子さんと一緒に体験するな
かで感動したことを中心に書かれています。ですので「子育て」や「教育」
の場のお話が多いのですが、決してデンマークの「教育」についてのエッセ
イにとどまるものではありません。「子育て」や「教育」を通してこそ見え
るデンマークの社会全体のあり様が描かれていると思います。

「大人たちの心に余裕がある」「学校は“楽しい”以外の何ものでもない」
など、今の日本が「効率」や「経済」優先の社会のなかですっかり失ってし
まった情況について語られています。

もちろんそれはデンマークの文化や風土のなかで培われたあり方ですから、
そのまま日本にもってくればいいということではないと思いますが、「大き
な政府」か「小さな政府」かという前に、どのような社会が私たちにとって
幸せなのかを私たちひとりひとりが考え、イメージやビジョンを描いていく
際には、大変参考になるものではないかと感じます。

大変読みやすく、魅力的な文章ですので、是非ご一読をおすすめします。そ
して、どのように感じられたかなどお寄せいただければと思います。

※あす発行の<その2>につづく。
  著者高田さんからみなさんへのメッセージです。     (宮崎郁子)


高田ケラー有子著 「平らな国デンマーク」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4140881534/qid%3D1134376872/503-650
5059-1243152