2009.2.11発行 vol.292
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【特集企画】
       「りーだーず・ぷれす」連載コラム特集!

●「やるぞ!半農生活、軌道修正から見えてきたもの。」   ハナコ

●「春はもうすぐ」                   みのむし

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        ---連載コラム「りーだーず・ぷれす」---
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期せずして「農」をキーワードにしたコラムが届きました。どちらもとても
豊かなお話です。どんなに不況でも「衣食住」から「食」だけは省けません。
身近で手作りできると理想ですが、そうでなくてもできる範囲で、決して贅
沢でなくても、自分が思う「豊か」なくらしをしていきたいものです。

・「りーだーず・ぷれす」とは? →
http://www.pangea.jp/c-press/readers/about.html
・参加したくなったら… →
http://www.pangea.jp/c-press/readers/sanka.html
・前回の「りーだーず・ぷれす」 →
http://www.pangea.jp/c-press/backnumber/cp-0270.html
・よーちゃんのページ →
http://www.pangea.jp/c-press/readers/yo-chan/
・西田良枝(Emabu)さんのページ →
http://www.pangea.jp/c-press/readers/emabu/
・高畑静江(アクトレス)さんのページ →
http://www.pangea.jp/c-press/readers/actress/
・ハナコさんのページ →
http://www.pangea.jp/c-press/readers/hanako/
・みのむしさんのページ →
http://www.pangea.jp/c-press/readers/minomushi/
・トナリノさんのページ →
http://www.pangea.jp/c-press/readers/tonarino/
・じょいさんのページ →
http://www.pangea.jp/c-press/readers/joy/
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●「三度目の人生設計」
    〜 田舎で実践 ほどほど生活のすすめ! 〜     第9回

   「やるぞ!半農生活、軌道修正から見えてきたもの。 」 ハナコ

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世界中が大変だ。日本中が大変だ。都会も田舎も大変だ。毎日毎日、メディ
アを賑わす負のスパイラル。全国的に底なしの不況の中で山陰地方鳥取県も
ガタガタだ。交付金も減ってきている上に、税収は大幅にへこみ、果たして
不足ない行政サービス、地域経営が出来るだろうか?未来は見えてくるだろ
うか?・・・気分は沈むばかりだ。隣りで暮らす90才にも近いおばあちゃ
んが新聞、テレビのニュースをみては心配している。「わしらは戦争、もの
のない時代を生き延びてきたからこのくらいの不況はなんでもないけど、子
や孫たちの将来を考えると、夜も眠れない時がある。大学を卒業しても就職
口があるか?」と、心配してくれる。

でも、幸いなるかな。この世界不況のお陰で、ブレーキ(自制心)の錆付い
た人類が一時でも立ちとまることができたのだ。「このままではいけない」
と思いはじめた。何がいけなかったのか?と明確に見えたわけじゃないけど
それは膨らむばかりの虚構経済、詐欺的な株価、オイルマネーの支配、ドル
依存などからの脱出かもしれない。このままではいつか、地球は爆発してし
まうのではないか?と、ずっとココロの底が軋み続けていたから。

しかし、よくよく考えてみよう。田舎の一人よがりの論理かもしれないが。
近年、日本は農業国であるにもかかわらず、農業から目線を逸らし「工業中
心で企業向き」の政治をしていたから一層悲劇的になってきたのではないか。
工業国、技術立国を目指すのもよろしいが、農業を疎かにしてきたツケがき
ていると言えなくもない。緊急経済対策?生活支援?こんなものは当てにし
ては居られない。自己防衛に入りつつ、攻めの方法も考えねば・・・などと
これからの生きる術を考える日々である。

いい機会でもあるので、農業を考えていこうとだんなと二人で経営戦略会議。
幸いにも、私たちには農地がある。山や畑、田んぼがある。高齢ではあるが、
農業の先生も隣りでがんばっている。
農産物の産直ネットショップの取り組みや農産物直売所への売り込みにも挑
戦。どう差別化をすればアピールできるのか?何を売りにするのか?大手の
ネットショップシステムに乗っかれば、ある程度の成果は得られるだろう。
しかし、それにも結構な資本が必要。地道ではあるが、独自の道を歩もうと
日々、コツコツと悪戦苦闘しているこの頃だ。

昨年は、「鳥取の砂丘ぶどう」をネットで販売してきたわけだけど、ぶどう
生産者にズバリ尋ねてみた。
「売り上げは伸びましたか〜来シーズンもやっていけそうですか?」
「ええ、お蔭様で去年より数字はいいですよ。応援してくれる人がいるので
遣り甲斐もあるし、このところ農業に追風も吹いてきた。来年もがんばりま
すよ。」と笑顔を見せてくれた。
これでいいいのだ。こういう前向きで意欲のある生産者を多く仲間として戦
略をたてていけばいいのだ。何がなくても、食料は田舎の最大の強みである
とさらに嬉しくなった。

そして、直売所での経験として差別化を図ることの大切さを感じてきた。ブ
ランド化とまではいかなくても「ミセスハナコ」のほにゃらら〜(緑大豆、
黒豆、富裕柿、干し大根・・・いろいろ)とラベルをつけて店頭に並べる。
幸いにも、企画・デザイン力はある。コピーもかける。ひと味つけて、付加
価値をつけて、他よりもいくらかでも高く売ることだ。店頭に並べて自宅に
帰ってみると、直売所から売り上げ報告のメールが届く。「おお、売れてい
るではないか!やったね!」新参者が結構な売り上げを出している。うれし
くなって、次はこれ、あれとアイデアが湧いてくるというもの。
「干し大根には、干した人参と干ししいたけもプラスしたら?主婦は、大根
だけのものとどっちを買うと思う?」(これで他に比べて50〜100円は
高く売れるというものだ。)と内心ほくそ笑む。
宮崎産の東国原知事のイラスト入りの干し大根が、スーパーで180円で売
られているのなら、「ミセスハナコの切り干し大根 プラス 人参、干しし
いたけ」は200円で売れる!!ルンルンと袋詰め作業をしている私を見て
「なんだか、楽しそうだな〜」とだんながいう。
「うん。楽しいよ〜」と私。小規模でかわいらしい半農生活の始まりである。

直売所は、生産者と販売所の双方にとっていい関係だと思う。生産者がつけ
る売価の15%の手数料を販売所に支払う。それだけで、場所と販売の手を
担ってくれるのだから、生産者にとっては納得のいく価格が設定できる。昨
年、JA鳥取中央は、特産である「大栄スイカ」がドバイへ売り込みに行っ
た。国内で1玉3500円のものが、大富豪のドバイでは35000円にな
ったと鼻息が荒い。では、生産者が豊かになったか?と聞くと、生産者価格
は変わらないという。高価なガソリン代と航空運賃が上乗せされ、加えてC
O2を余計に排出しただけで、何ら生産者へのメリットはなく疑問だけが残
る。これって、正しいの?

結局、生産者が自ら納得のいく価格設定ができる仕組みをつくりあげること。
これが、達成感と誇りを持って取り組める農業のあるべき姿だと思う。農家
への直接的な所得保障(農協や行政を通していてはダメ)をして将来設計が
可能な農業のスタイルを構築することだと思う。農業は「食料と国土保全」
という国家プロジェクトを担う産業だということを、もう一度認識していく
ことが大事だと思う。

ここ数ヶ月足らずの経験ではあるけど、これからの生き方にも良いヒントが
得られたと感じている。生産者、消費者共に、直接販売できる直売所や産直
ネットへのニーズが高まるのは当たり前だ。調子が上向いて、ある程度の数
字が見込めるようなら、直売所を自らが経営してもいいよねと思うほど。同
じような志の生産者が集まって「ファーマーズ・サーカス」ってなテント市
場を夢に描いて、さあ、明日もがんばるぞ!!

                          次回につづく

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●「これが私の生きる道?〜山里暮らしで見えてきたこと〜」  第5回

    「春はもうすぐ 」          みのむし

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立春を過ぎ、暦の上ではもう春ですね。でも、実際は一年で一番寒い頃では
ないでしょうか。
今年は元旦から雪で、その後も何日も雪が続いたりしたので雪が多いのかと
思っていたら、そうでもなく、少しほっとしています。それでも寒いことに
は変わりなく、朝起きるのは覚悟がいりますし、寝る前には水道が凍らない
ように水を出しておかないといけません。けれど、散歩の途中にまだ固そう
なふきのとうを見つけました。季節は少しずつ着実に動いているようです。

先日、友人が春の七草を探しに遊びに来てくれました。春の七草は、せり、
なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろです。七草粥
には少し遅いですが、小雨の中、七草を探して歩きました。見慣れた草のは
ずなのに、探すと見つからないのが不思議です。まだ寒いからか地面にはい
つくばるような草をつんで、お雑煮にいれて、七草粥ならぬ七草雑煮にして
食べました。七草を食べる習慣は中国から来たらしいですが、青い葉の野菜
が乏しいこの時期の貴重な青菜だったのでしょうか。

この時期、一つ大事な仕事があります。それは味噌の仕込み。寒(かん。正
確には大寒)の水を使って仕込んだ味噌はカビがこないし、おいしいと聞い
て、去年初めて仕込んでみました。やってみるまではとても大変な仕事に思
えて腰が重かったのですが、やってみると意外と簡単でした。もちろん時間
はかかりますが、一年後においしい味噌が食べられると思えばやりがいもあ
ります。年末に、去年仕込んだ味噌の封を開けて食べてみました。仕込んだ
ときは白っぽかったのが、発酵して茶色くなり味噌らしくなっていました。
味もまろやかで市販のものとは一味違います。(これは好みがあると思いま
すが・・・)これが「手前味噌」というものか、と感動。毎日、大事に味噌
汁に使っています。去年仕込んだ量は一年分には程遠かったので、今年はが
んばって少し多めに作りました。3月くらいまでは味噌の仕込みに向いてい
るらしいので、もう少し作ってもいいかな。

昔の人は、今のように便利な道具もなしに何でも手作りしていたのだから、
すごいなと思います。お米や野菜も全部自分で作って、それを使って保存食
を作る。大変ではあったと思うけれど、ゆったりとした豊かな時間が流れて
いたのでしょう。今は便利になったけれど、気づくと毎日時間に追われてい
ます。何でもお金で買えるけれど、何か満たされないような気がするときも
ある。そんなときは、いつもは買ってすませているのを作ってみると楽しい
かもしれません。最初は面倒くさい、時間がもったいない。そんな気がする
かもしれません。でも、手や体を動かし始めると、頭もすっきりしてきて、
出来上がったものを食べたらお腹も大満足。子供がいれば一緒に作ると子供
も喜ぶし、いなければ友達といっしょにやるといいかも。そんなにすごいも
のを作る必要はありません。おにぎりでもいいし、パンをこねるのもいいし
全部手作りが大変なら一部だけでもいいと思います。

さて、これから春に向けて考えないといけないことが二つ。一つ目は、畑に
何をいつどう植えるか。今年は時期をはずさずに作りたいものを植えていき
たいので、去年の失敗を繰り返さないように計画中です。年末、畑にぼこぼ
こ穴があくというモグラ事件が発生。しばらくして、モグラはいなくなった
ようですが、今年も何が起きるか、ちょっと怖いような、それでも楽しみで
す。もう一つは、末っ子が春から保育所に入れる予定なので(この辺りは幼
稚園がないので、みんな保育所に入れるようです)自分の時間をどうするか。
しばらくご無沙汰している翻訳を少しずつやりながら、「食」のことについ
てもいろいろ勉強していきたいし、丁寧に暮らしていきたい。幸い、畑仕事
も「食」についても、近所のお年寄りという先生がたくさんいるので、少し
ずつ習いながらやれたらいいなと思っています。味噌に梅干、お茶に漬物、
こんにゃくと、当たり前のように作っておられるので、私もぜひ見習って少
しでも手作りの食べ物を増やせたら、楽しいし安全だし、一石二鳥。

とにかく春の訪れが待ち遠しいです。

                          次回につづく

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