2015.9.15発行 vol.379
--------------------------------------------------------------------
■INDEX■

発行人の気まぐれコラム 4

◇ next・近代。脱・明治

その6 科学の「限界」とこれからの科学。

…………………………………………………………………………………………

「私たちの住む列島や私たちの持ち味などをどう活かして、next・近代、脱・明治の社会像を描いていくか」というテーマの3ポイント目です。

[科学の暴走阻止と、方向性を定めての集中化]

■「科学」の限界

この「発行人コラム」の2で、まず、私の問題意識、危機感を説明するのにわかりやすい例として取り上げた「NHKスペシャル・ネクストワールド」シリーズ。そこには、コンピュータ、人型ロボット、生命科学、バーチャルリアリティ、他天体進出などの科学をこのまま進めた先の未来が描かれていました。もちろん肯定的に。
http://www.nhk.or.jp/nextworld/map/main.html#help

しかし、私には全てがグロテスクなもので、どれひとつとっても夢を感じるものではありませんでした。それまで漠然と感じていた「このままではダメだ」という思いが、わかりやすく表現できる、話の発端としては格好の番組だったのです。

いったいそんな未来が幸せなのか。夢がもてるのか。
グロテスクな未来が追求しているのは、便利、楽チン、不老不死、生命操作、現実逃避、単純な知的好奇心追求、宇宙からの地球支配と新たな他天体侵略、資源収奪などなどではないでしょうか。そして、全てに必ず大きなマイナス面、デメリット、危険性、様々な新たな問題創出が予想されるものばかりです。

そんな「進歩」、本当に必要なのでしょうか。

現実に、すでにその兆候は見えています。具体例を上げれば、どちらも米軍の軍事利用のために開発され、その後一般に放出された技術ですが、インターネットシステム、話題のドローンなど。もちろんそれが良い方向に使われればいいのですが、感じとしては、良い使い方をされるのがせいぜい2割、8割以上は悪用される、あるいは思いもよらない悪影響を社会に及ぼすというのが実感です。

それは、きっとあらゆることがそうなのです。でも、便利になればなるだけ悪いことがカンタンになってしまう。たとえば身近な例でいえば、メールの受信を見ればよくわかります。ほとんどが迷惑メール、相手などどうでもよくて無選別、手当たり次第に自動的に送られるたぐいの無意味メールばかりで、本当に自分に関係のあるメールは2割以下だという感触ありませんか?

そして、マイナス面によってとりわけ問題がおこれば規制がどんどん増えていく。それによって取り締まるための人件費などのコストが増大する。画期的な新技術と、それによって必然的に多発する問題、そして規制のイタチごっこがどんどん加速していくだけというのが実感です。

■画期的なものはもういらない。20世紀の間にできた画期的といわれるもの の、マイナス面、問題点を「改善・改良」していくのが21世紀の科学や技術の最大の使命。

不必要な画期的技術。
例を上げれば、たとえばガンが発生する前のガンのもと、ガン因子の早期発見。最近それを可能にする画期的な検査技術が開発されたそうです。ところが発見できてもそれに対する対処法はなく、注意して日常生活を送った上で、ガンが発生するかしないかは、自らの免疫力が勝つかどうかだそうです。発見された部位にとっていいとされる生活を送ることはできるでしょうけど、それが平静な気持ちでできるのは相当ドンカンな人かアメリカ人などには多い精神的に強靭な人。私たち繊細なモノたちは、自分のどこかの部位にガン因子があるなんて知らされたら、それだけで不安になり、大きなストレスになって免疫力はガタ落ちになるのではないでしょうか。何のための早期発見なのでしょう。

そんな例は枚挙にいとまがありません。ここのところの画期的な新技術や新製品のほとんど全てには、全然魅力がありません。「そんなものいらない」というものばかりなのです。「画期的」というものは、もうほとんど不要なのではないでしょうか。

それよりも、日本企業や技術者や職人が本来的にもっているこだわりや思いを形にした「改善・改良・工夫」が大切になっていく時代だと感じます。そういうものには、とても魅力的なものがあります。

画期的なものは、20世紀までに出たものでほとんど十分。それらが必然的にもっているマイナス面、問題点を「改善・改良・工夫」によって少なくしていくのが21世紀の科学や技術の最大の使命だと思うのです。
もう画期的なものはいらない。もう、これ以上解決しなければならない問題を増やしてほしくはありません。

■遊んでるヒマは、もうこの地球にはない。

そして、知的好奇心を充たすだけのための研究も、そんなものに時間とコストをかけている余裕は、もうこの地球上にはないのではないでしょうか。以前はよく「必要は発明の母」とかいわれました。でも今では、何か画期的なことが発見されてから、その用途をひねり出す「発明は必要の母」に逆転しているように思えてなりません。
それに、科学的な未知領域を少し知ったからといって、何が変わるのでしょう。これも西洋近代が結局、人間が神に近づきたいという欲求からスタートしていることに関係していると思います。神に少しでも近づきたい、ただその欲求だけなのではないでしょうか。

たとえば宇宙進出。とにかく宇宙に行ってみたい宇宙からの光景を見たいという西欧的好奇心からスタートしたとは思います。「2001年宇宙の旅」好きの私もそうでした。そして、宇宙から撮影した地球の映像は衝撃的でした。美しいのです。私もいちど自分の目で見てみたいと強く思ったこともあります。でも、その美しい、宝石のような地球は、人間によって破壊されつつあります。

その根本は、「宇宙に行ってみたい」も「自然を人間のためなら際限なく利用する」も同じモダン志向、進歩志向を元凶とするものです。そうなると、あの宝石のように輝く地球を壊してまで宇宙に行きたいのか、という問いが当然生じます。私は21世紀になった頃から、宇宙に行きたいという思いはぱったりなくなりました。あの美しい画像だけで充分。日本列島の自然が地理的偶然あってこそ美しいのと同じように、地球も宇宙、少なくとも太陽系の中で本当に偶然に、多様な生命が生きられるという幸運な環境を得ているのです。太陽系の他の天体のことを少し知れば、地球がいかに幸運な星かということがわかります。地球の美しさをこの目で見るより、その地球がダメになっていくことは何とかしたい。あるいは持続できるようにしたいと思うようになりました。

でも、そうじゃない人も多いんですよね・・。個人がそういう夢をもつのは、わからない訳ではありません。そうした単純で、素直な欲求はわかります。でも、国家的な判断には、何らか得になることがなくてはなりません。まあ、米ソなどは、始めからそのつもりだったのでしょうが、宇宙をまっさきに支配して、支配エリアを宇宙まで無限に拡大すること、そして、宇宙から全地球を支配すること。他天体を植民地にして、自国民を送り込むこと。そして、どこか他天体の資源とか何らか役に立ちそうなものを収奪すること。

でも、これまでの話で出てきているように、そういう画期的なことには、必ず予期できない問題や悪影響が、予想した果実の4倍も5倍も発生して、大変なことになります。とても私たちの手に負えない状況が発生することぐらいは、容易に予期できます。

ことほど左様に、20世紀中にあったいろいろな科学の進歩といわれることも、実は少しも神に近づくことにつながっていないというのが、残念なことに現実なのではないかと思います。
人間は、神に近づくこと、自然を支配することを諦めるべきです。というか「分」を知るべきです。私たちは、他の生物と何も変わらないのです。そういうスタンスに立たなければ、この地球でもう生存を許されないでしょう。そのことを知ることが、私たちのこれからを開く第一歩だと思います。

それこそが、「next・近代」です。

[これから求められる科学と学問の方向性]

■少なくともこの日本列島における、21世紀の科学と技術、学問の役割。

これまで先行して書いた2つのポイント、[食料の完全自給への価値観をもちつつ、自給率の最大拡大]と[自然の力活用による、エネルギーの完全自給]とに特化した方向性を、科学や技術の分野でも第一に推進していくべきでしょう。何と言っても「next・近代。脱・明治」の基本中の基本と考えるからです。そして、世界全体にとっても、最も必要な分野です。

その過程で発見されたり、発明されたり、技術開発されたものについては、実際に広く採用する前に、試行の段階で表出した、あるいは懸念が出てきたマイナス面も表に出して、十分検討されるべきです。何らかのリスクがあるものは、そのリスクへの対応技術を含めて開発されるべきだと思います。
あるいは、それが困難ならば実用化しないという思い切りが必要です。

こうした、マイナス面の想定、そのリスクヘッジ、そして実用化をあえてしないという思い切りが必要というスタンスは、全ての科学・技術分野において、共通のことです。
そこには、しっかりとした哲学、倫理観が必須になります。
それ故21世紀は、そうした倫理学、あるいは宗教哲学といった学問、そして教育が、とても重要なものになるでしょう。

今号は、このくらいにします。次号では、「これからのビジネス、マネーのあり方」のイメージを書いてみたいと思います。

みなさんのご意見、ご感想などお待ちしております。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

2015年9月15日 『きゃりあ・ぷれす』発行人 宮崎郁子

株式会社パンゲア 東京都渋谷区恵比寿西1-24-1
メールアドレス cp-info@pangea.jp