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「“LOHASジャーナル”
フランク・ランペ編集長インタビュー」

 

◎「LOHASジャーナル」フランク・ランペ編集長インタビュー

 米国のLOHAS市場拡大にメディアの側から貢献してきた「LOHASジャーナル」のフランク・ランペ編集長に、米国のLOHAS企業事情などについて聞いた。

−米景気が低迷する中にあって、LOHAS企業群の現状は

 02年に入って倒産した企業は数社程度だ。ベンチャー・キャピタル(VC)から十分な資金が流入しており、確立したブランドを持っている企業はLOHASビジネスに参入したい他社に買収を求める環境もある。

 LOHAS市場の5分野(本文参照)のうち、持続可能な経済はまだ始まったばかりである上に、他産業の動向に左右されるせいかあまり良くない。例えば、自動車向け燃料電池を開発している企業は、莫大な開発費がかかるもののまだ利益を生み出すには至っていない。しかし、先行きは非常に明るい。燃料電池製造のバラード・パワー・システムズ社は、ゼネラル・モーターズ(GM)とダイムラークライスラーという2大メーカーから出資を受けて、両社向けの燃料電池を開発中だ。資金と安定的な供給先を確保しているので、3、4年後には成功するだろう。

 また、健康的ライフスタイルでは、有機無農薬食品市場が年15−20%ペースで成長する一方、かつては年150−160億ドル規模でこの分野最大の市場規模を誇っていたサプリメントはここ数年低迷している。90年代後半、それまで売上を伸ばしてきたアミノ酸製品の一部を使用して死者が出た事例がメディアで報じられるなど,品質をめぐる問題が生じたことに加えて、多くの企業が参入しすぎて供給過剰となったことが原因と考えられる。

 代替医療と自己啓発も、極めて初期の段階で市場規模も小さいが急速に成長している。日本でもそうだろうが、米国では忙しい日々を過ごす人々の間で人生の中で何が重要なのかを模索するためにお金を掛ける動きが出ている。環境配慮型ライフスタイル分野も概して良い。パタゴニアの成功が好例だ。

 LOHAS消費者は高品質の製品やサービスを求めており、経済状況に関係なく品質に対して余分にお金を払うことをいとわない。

−スターバックスやBPのように、大手企業がLOHASビジネスを展開する動きをどう見るか

 われわれは、BPの石油・天然ガス事業部門をLOHASとは見なさないが、太陽光パネルの販売事業はLOHASと見なしている。大企業もわれわれを取り巻く経済や環境が持続可能な方向には向かっていないということに気が付いている。自動車大手フォード・モーターのウィリアム・フォードCEOも内燃機関エンジンをやめる時が来ることを願っていると言っており、これまでとは違った非常に積極的なアプローチだ。

 これらの企業はいずれも、次世代を見据えて企業哲学を転換し、積極的に行動していると言える。よく冗談で言うのだが、わざわざLOHASと区別しなくてもいい、つまりすべての経済活動がLOHASになる日が来ることを願っている。

 われわれが見極めなければならないのは、大企業が本当に持続可能な経済を実現する方向に向かっているのか、もしくはただ単にLOHAS消費者をマーケット対象と見なして搾取しているだけなのかということだ。これは時間が経てば明らかになるだろう。ただ、LOHAS消費者は後者の企業にだまされるような存在ではなく、本当にLOHAS市場で成功する企業かを判断することができる。トヨタ自動車のハイブリッド車「プリウス」が米国で非常に受け入れられているのがよい例だ。

−大手企業がLOHASを本格的に実践するまでにどの程度時間がかかるか

 何らかの大きな出来事で変化が速まるか、長期的に変化するかどちらかだろう。前者としては、中東情勢の緊迫化に伴って十分な石油を確保できなくなる、もしくは遺伝子組み換え(GM)食品や農薬などが原因による食品をめぐる大事件が発生するなどが考えられる。しかし、こうした出来事が本当に変化を加速させるかは予想できない。ただ、われわれがやってきたことは多くの人々に理解されてきており、変化のスピードが増していると感じる。

 われわれはスターバックスをLOHAS企業とは見なしていない。しかし、大企業がLOHASを推進する動きはいつも肯定的にとらえている。スターバックスを例にとれば、大切なのは何故彼らが有機コーヒー豆販売を始めたかということだ。大企業グループの食品会社の中には有機食品を取り扱っている会社もあるが、彼らは社会的責任とか持続可能な農業のあり方を志向している訳ではないだろう。ニッチ市場で利益が出るという点に着目しているだけだ。もっとも、スターバックスがもっと有機コーヒー豆を売るようになれば、LOHAS企業と言わなければならなくなるかもしれない。

−最近では、「タイム」や「ニューズウィーク」などの主要誌も環境破壊や有機食品といったLOHASに関わるテーマを取り上げるようになった。そうなると、小さなメディアとして埋没してしまう危険性を感じることはないか

 大手メディアが取り上げることで変化のスピードが速まるのであれば、私は歓迎したい。ただ、本音を言えば、われわれほどLOHAS市場を深くカバーしているメディアはないと自負しているので、まださほど心配していない。ウォール・ストリート・ジャーナルも、毎週何らかの形でLOHAS企業を取り上げているが、一般の人びとの認識を深めるので結構なことだ。

 大手メディアは、LOHASをニッチなビジネス機会ととらえて関心を示すのだろう。LOHASが面白いのは、企業がLOHAS消費者をマーケットととらえてビジネスを展開するのは簡単なのに、企業自身がLOHAS的な価値観を伴わなければビジネスそのものが成功しないという点だ。LOHAS消費者が企業をきちんと観察している証拠だろう。企業がLOHASを理解する動きがあちらこちらで見られるようになるのであれば、素晴らしいことだ。

−日本企業のLOHASに対する関心度はどうか

 米国ではLOHASへの関心は中小企業から草の根的に広がったが、日本で開いたLOHASシンポジウムには超大手企業の関係者が来ており非常に驚いた。米国で私がぜひ接触したいと考えるクラスの企業ばかりだ。もしかすると、日本では米国とは違った方向でLOHASが広がるかもしれない。どうなるか楽しみだ。(了)

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