<<<戻る

現代人の救世主、代替医療

 病気の症状に素早く働きかける治療方法ゆえに副作用を伴うこともある現代医療に対して、人間に備わった自然治癒力を最大限に引き出しながら体内の健康なバランスを回復させることに主眼を置く代替医療。ホメオパシーやハーブ、マッサージ、指圧、針といった代替医療に従事する医療・ビジネス関係者が一同に会した全米初のシンポジウムが今年2月、ニューヨークで開かれた。アメリカで代替医療が盛り上がっているのは何となく肌で感じてはいたが、取材を通じて耳にした数字にその勢いがはっきりと表れていた。(写真=ニューヨークでの代替医療EXPOの様子)

 米国では現在、国民の2人に1人弱に当たる1億2500万人が少なくとも1つの慢性疾患を抱えている一方で、国民の約7割は適切な治療を受けていないと考えているそうだ。そんな人たちが代替医療に救いを求めるのは無理もないことで、現在では米国民の約4割の人が何らかの形で代替医療を利用するまでになっている。代替医療は、ますます不健康になりつつあるアメリカ人にとって救世主となっているようだ。

 患者側のニーズに応えるべく、全米各地のメディカルスクールでは代替医療をカリキュラムの一部に入れるようになってきた。米国では、メディカルスクールを卒業すると得られるいわゆるMedical Doctorに加えて、特定の大学では代替医療を実践するNaturopathic Doctorという資格も得られる。何からの代替医療を受けたければ、まずはN.Dの称号を持った医者を訪ねればいい。

 代替医療と書くと、単なる現代医療の代わりの治療法と思われてしまいがちだが、こちらでは精神を落ち着かせる瞑想や体の動きを伴うヨガや太極拳、健康的な食生活を実践させる栄養指導まで代替医療に含むので、心身一体型(Mind and Body, Holistic)治療とでも呼ぶほうがふさわしい。また、患者の心身状態だけではなく、患者が身を置く外部環境の改善(例えば、汚染された空気や有害化学物質への接触を避ける)も重要視されるので、代替医療界では自然環境保護も自ずとテーマになる。代替医療のノウハウを知るにつけ、例えばサプリメントなどで手に入れられると謳われている“健康”のもろさを思ってしまう。

 このまま行くと、慢性疾患を抱える米国民の数は2020年に1億5700万人に達するという。アメリカ人よりは健康的な食生活を送る私たち日本人ではあるが、他人事では済まされないはず。今後日本でも、様々なレベルで心身一体型医療が盛り上がることを期待したい。(2005年2月掲載)

ご質問やコメント、お待ちしております。

<<<戻る

Poco a Pocoトップへ

Copyright(C)2006 Maki Kimura All Rights Reserved


サイト制作・取材協力
e-mail:c-press@pangea.jp
(c) 2006 PANGEA inc. All Right Reserved