「ヘルウィック・ピーターズ氏インタビュー」
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◎エティベル・ストックアットステイクCEO
ヘルウィック・ピーターズ氏インタビュー@

−設立の経緯は
 エティベルは倫理的投資を望む複数の小規模基金の運営者らによって1992年に設立された。彼らは投資先企業の調査・評価に関する専門知識がなく、独立した団体を作る必要性があったからだ。

エティベルは、倫理基準を満たす企業に投資するSRIファンドへの品質保証と企業調査・評価を行ってきた。エティベルは非営利団体だが、調査活動が増えるにつれて資金が必要となったことに加え、調査結果に信頼性を持たせる意味でも調査部門を独立させるのが重要だと考え、2000年に同部門を分離してストックアットステイク(SAS)社を設立した。

 SASはエティベルのほか、金融機関や政府機関などに評価情報を提供している。また、欧米12カ国の調査機関と連携してSiriグループを構成し、世界の主要企業500社の情報を管理して相互利用している。

エティベルはSRIファンドへの品質保証・管理のみを行うことになり、現在は欧米7カ国のファンドと契約している。ベルギーでは36のSRIファンドのうち、16ファンドに品質保証している。

−SASの評価手法の特徴は
 アングロサクソン系の国々ではネガティブ・スクリーニングが一般的だが、われわれは4つの分野(本文参照)を総合的に評価するポシティブ・スクリーニングを採用している。このほうが企業に多くのメッセージを与えられて効果的だ。

 われわれは企業規模や株価に関係なく、地域内や業界内でのパイオニア的企業を積極的に調査・評価している。企業にとって自社の現状を同業他社と比較できるのは貴重であり、10年前には防衛的だった企業もわれわれから大いに学んでいるようだ。われわれも以前より調査が容易になった。

−世界のSRIの現状は
 確かに普及し始めているが、欧州ではまだ市場全体の1%を占めるにすぎない。米国では20−30%とも言われるが、われわれの評価手法に基づいたSRIとなるとやはり1%程度だろう。とはいえ、普及のスピードは速い。ベルギーは小国だが、5年前には6つだったSRIファンドが現在は36に増え、欧州で最も急速に普及した国と言えるだろう。

 また、年金関連の法制度などによってSRIを推進しようとする動きも各国で出始めている。年金基金は世界一の資産運用主体であり、こうした動きはSRIの普及に効果的だろう。SRIは株主議決権行使のもう一つの側面で、普及すれば確実に企業の方向性を変えるだろう。

−既存のファンドに比べてSRIファンドの運用成績はどうか
 SRIファンドの株価指標はいくつかあるが、エティベルユニバースの96年−00年のリターンは、例えばMSCIワールドインデックス(モルガン・スタンレー・キャビタル・インターナショナル社の全世界株価指数)よりも約7%高かった。

特に2年前は、IT関連株の好調でIT銘柄の比重が大きいSRIファンドのパフォーマンスは全般的に良かった。常に既存ファンドを上回る訳ではないが、概して良好な結果を残していると言えるだろう。

 ただ、米国のドミニ・ソーシャル・インデクスさえも10年程度の歴史しかなく、SRIファンドのパフォーマンスについて結論付けるのはまだ早いとの見方があるのも事実だ。われわれとしても、Siriの主要企業500社に基づく独自のSRI株価指標の開発に努めている。

−日本企業はどの程度評価したか
 SASはSiriグループの一員としてベルギー、日本、シンガポール、香港企業の調査を担当している。日本企業の調査は昨年5月から3人のアナリストによって行われており、現時点で76社を評価し、基準を満たした企業は35社となった。日本企業の調査を拡充するため、調査に協力できる日本の調査機関と接触している。

 日本企業は世界的に見ても株式の時価総額が大きい。海外市場で上場する動きも出てきており、ますます情報開示の透明性を求められるだろう。調査を受ける日本企業の中にはまだまだ防衛的な面もあるが、情報開示の必要性を理解している企業もあり、少しづつ変化している。

−企業調査に障害はないのか
 最近、米国証券取引委員(SEC)の新ルールで財務以外の情報でも事前開示するとインサイダー取引に抵触する恐れが出てきたことで、米企業が以前よりも情報開示に神経質になったのが気になる。

 こうした動きに対応するには、今後もあらゆるネットワークを駆使して情報を得る以外にない。

−SRIは今後も拡大するか
 SRIの将来については2つの考えを持っている。一つは、SRIが完全に通常の株式投資の形態となり、SRIという概念そのものが消滅することだ。一方で、ばらばらな企業調査基準に基づいたSRIが増えることで、SRIの質の問題も出て来るかもしれない。

 SRIをめぐる状況はこの10年間で劇的に変化した。まだ規模は小さいが、後戻りしないということだけは確かだ。(了)

ご質問やコメント、お待ちしております。

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