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   仕事と社会のこれからを考えるリポート&アクションマガジン
         「きゃりあ・ぷれす」vol. 183
           2005・2・23(水)発行
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■INDEX■
【特集企画】「MINOHODOism」レポート vol.2
      細分化・専門化から、統合化・全的医療へ。
      ようやく動き出した医療変革の流れ。(前編)

      ◆はじめに

      ◆「ホリスティック医学」とは

      ◆「ホリスティック医学シンポジウム2004」レポート

      ◆人まかせから、自分が主体となる医療へ


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 ■□■                          ■□■
     これからの医療に向けて、先駆的に活動を続ける
     「日本ホリスティック医学協会」。
     「ホリスティック医学シンポジウム2004」レポート
                          宮崎郁子
 ■□■                          ■□■

「MINOHODOism」レポート第2弾として、ホリスティック医学、統合医療に
ついての特集を2回にわたりお送りします。

「NPO法人 日本ホリスティック医学協会」は「MINOHODOismリンク集」にも
ご参加いただいている団体で、ホリスティックな健康を志向する医師、歯科
医師、鍼灸師、その他の医療関係者、各分野の研究者、一般市民の協力によ
って、1987年に誕生した非営利団体です。(2003.10月現在、会員数2200人)
http://www.pangea.jp/c-press/link/shintai.html

今号では、「ホリスティック医学」のご紹介と、「ホリスティック医学シン
ポジウム2004」レポートをお届けします。


【はじめに】============================

筆者の「ホリスティック医学」とのそもそもの出会いは、13年前に母の突
然の末期ガン宣告を受けたときに、書店で買い漁ったがん治療関連の一般向
けの本のなかに同協会会長で、帯津三敬病院院長(当時)の帯津良一氏によ
る「ガンを治す大辞典」があったことにさかのぼります。当時、書店の医療
書コーナーには、玉石混交のさまざまな医療本がならんでいました。母が入
院している病院は、ほとんどサジを投げた状態で、このままいわゆる西洋医
学だけに任せておいたら、死が目前に迫っていることは火を見るより明らか
でした。私の願いは、母にたとえ1日でも2日でも、心地よく安らかな日常
生活をもういちど送ってもらいたいということでした。それには、副作用の
激しい抗癌剤は、採用できないと思っていました。では、どのような方法を
採用したらいいのか。その困惑のなかで、さまざまな療法を選別する「よる
べ」として大きな力を与えてくれたのが、「ガンを治す大辞典」でした。

そこでは、西洋医学を含め多くの伝統医療、代替医療などが、ニュートラル
な立場で紹介されていると感じました。個々の代替療法などの紹介本は、そ
れぞれ出版されていましたが、そのどれもが、この療法こそ一番というもの
でしたので、もっとトータルでニュートラルな情報が必要だったのです。こ
の本のお陰で、療法の2面情報が得られ、通院先の立地や、母の性格なども
ふまえ、4つの療法を組み合わせることを選択できました。お陰で、抗癌剤
など西洋医学による常套的治療をした場合、5年生存率1000分の1とい
われた母は、その後10年、病気の前よりもむしろ元気な状態で、快適な生
活を送ることができたのです。

長々と個人的な話をしてしまい、恐縮です。ただ、13年前には、私の知る
限り、一般向けに西洋医学に偏らずにさまざまな医療を網羅的、系統的に紹
介しているものは、日本ではほとんど唯一の存在だったということをお伝え
したかったのです。
当時、患者やその家族が自分で医療を選択するための信頼できる情報を得る
ことは、今以上に困難で、さらにそれを実施することは、入院している病院
との関係もあり、大きなリスクを伴いました。
それを、情報としてまた精神的な支えとしてバックアップしてくれたのが、
「ガンを治す大辞典」であり、「ホリスティック医学」という考え方だった
のです。

今、伝統医学、自然療法、心理療法など従来の近代西洋医学とは異なるさま
ざまな代替医療が注目されつつあり、保守的な日本の医療界においても、そ
のような医療を研究・推進する医師を中心とする団体も増えてきています。
けれども、その志の高さ、思いの深さ、先駆性、活動実績において、帯津良
一会長の「日本ホリスティック医学協会」は、特別な存在であると考えます。

以下に、「ホリスティック医学」のご紹介と、シンポジウムレポートをお届
けします。

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●「ホリスティック医学」とは
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日本ホリスティック医学協会では、「ホリスティック医学」を次のように説
明している。

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Holistic(ホリスティック)という言葉は、ギリシャ語のholos(全体)を
語源としている。そこから派生した言葉にはwhole,heal,healthなどがあり、
健康-health-という言葉がもともと『全体』に根ざしている。
現在、ホリスティックという言葉は、「全体」「関連」「つながり」「バラ
ンス」といった意味をすべて包含した言葉として解釈されている。適格な訳
語がないため、そのまま「ホリスティック」という言葉が使われているが、
意味する内容は決して新しく輸入された考えではなく、もともと東洋に根づ
いていた、包括的な考え方に近いものといえる。
日本ホリスティック医学協会では、「ホリスティック医学」を次のように定
義している。

1.ホリスティック(全的)な健康観に立脚する。
  人間を「体・心・気・霊性」等の有機的統合体ととらえ、社会・自然・
  宇宙との調和にもとづく包括的、全体的な健康観に立脚する。

2.自然治癒力を癒しの原点におく。
  生命が本来自らのものとして持っている「自然治癒力」を癒しの原点に
  おき、この自然治癒力を高め、増強することを治療の基本とする。

3.患者が自ら癒し、治療者は援助する。
  病気を癒す中心は患者であり、治療者はあくまで援助者である。治療よ
  りも養生が、他者医療より自己医療が基本であり、ライフスタイルを改
  善して患者自身が「自ら癒す」姿勢が治療の基本となる。

4.さまざまな治療法を選択・統合し、最も適切な治療を行なう。
  西洋医学の利点を生かしながら、中国医療やインド医療など各国の伝統
  医療、心理療法、自然療法、栄養療法、手技療法、運動療法などの各種
  代替療法を統合的、体系的に選択・統合し、最も適切な治療を行なう。

5.病いの深い意味に気づき自己実現をめざす。
  病気や障害、老い、死といったものを単に否定的にとらえるのではなく、
  むしろその深い意味に気づき、生と死のプロセスの中でより深い充足感
  のある自己実現をたえずめざしていく。

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これまでの西洋医学とはかなり異なる考え方だ。まさに東洋的、日本人にと
って、本来とても馴染みやすく、私たちの身体の根底を流れる生命観や自然
観に違和感なくフィットする内容だ。明治以降、西洋化、近代化の名のもと
に打ち消され、押さえ込まれてきた考え方が、近代科学の象徴ともいえる医
学の世界でも注目され、復活しつつあるというべきだろう。

なかでも、病気や障害、老いや死を、忌むべきものとして避けるのでなく、
自己実現をめざすときのひとつの契機やテーマとして積極的にとらえていこ
うという姿勢は、一方で個体のあくなき不老不死をめざす先端医療とのくっ
きりした対比を示すものとして、大変注目される。


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●「ホリスティック医学シンポジウム2004」レポート
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日本ホリスティック医学協会によって1988年から毎年開催されている
「ホリスティック医学シンポジウム」の2004年のテーマは、『がんを病
むことの意味』。昨年11月14日、東京で開催された。


[講演&ディスカッション/治癒力と解毒力、そして気・エネルギー]

大森クリニック院長 大森隆史氏は、水道水等に含まれる有害ミネラルや歯
科金属充填物、さらにはワクチン中の水銀防腐剤などの、生活習慣病やアレ
ルギー、自閉症などとの関係に注目し、これらの毒素を体内から排除する
「引き算」の健康法・医療として、トータルデトックス(体内浄化)を提唱
した。

恒川消化器クリニック副院長 恒川洋氏は、ホリスティックな考え方を基に
多彩な「統合医療」を実践するなかで、患者の内なる治癒力を引き出す最大
の力は「気力・精神力」であり、たとえ「余命6カ月の末期がん」と宣告さ
れようと、治癒や長期生存の可能性は十分あることを強調した。

また、心身一体療法研究所の本宮輝薫氏により、がん発生についての新たな
仮説が示された。通常、毒素により遺伝子に異常が生じ、細胞ががん化する
と言われるが、むしろがん細胞の発生は、体内に蓄積した毒素を新生細胞に
引き受けさせ、封印しておく一種の解毒形式ではないかという仮説だ。そう
考えると、がんは決して悪者ではなく、むしろ生き延びるために必要な作業
を引き受けてくれる細胞という見方ができる。がんを悪として、ただ単に切
除したり叩いても、体内に毒素が蓄積されている限り、また毒素が新たに侵
入したり、ストレスなどにより体内で発生したりする限り、がんからは解放
されないことになる。徹底的な解毒と、環境やトータルな生活のあり方の見
直しが、今後のがん治療にとって最大のテーマになりそうだ。


[対話講演/がんと心]

続いて第3部は、サイモントンがんセンター代表のカール・サイモントン氏
と帯津良一会長による対話講演が行なわれた。
サイモントン氏は、米国の心理社会腫瘍学の権威であり、放射線腫瘍専門医
としてがん治療の第一線で治療にあたっていた際の臨床経験から、自分の施
す医療に行き詰まりを感じ、33年前に「サイモントン療法」を開発した。
がん患者とその家族などのためのヒーリング・プログラムだ。がんを「自分
の本性に戻るためのメッセージ」と定義し、生きがいワークやストレスへの
対応、希望と執着の区別、メディテーションなどさまざまなトピックによる
アプローチで、現代医学の盲点にメスを入れる心の医学を実践している。

対談では、人間の死亡率は100%であり、人生はすべて死に向かうプロセ
スであることを認識し、その上で、希望と充足感をもち続けることの大切さ
が語られた。また、医療には標準化が必要だが、個人個人への対応や地域性
も、これまで以上に重要なファクターになってくることも指摘された。


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●人まかせから、自分が主体となる医療へ
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「ホリスティック医学」について、どのようにお感じになりましたか。医学
が、専門家だけしかタッチできない特殊な世界から、私たちの感覚に馴染む
身近なものになりつつあるのではないでしょうか。医療とそれ以外というは
っきりした区分も取り払われつつあります。健康と病気の境目も実はそれほ
ど明確なものではないということも強く感じます。私たちは、日常的に自分
の身体や心と対話し、変調に対してまず自分自身の力で調整をはかっていく
ことが求められています。それが困難なほどに至った際は、これまでの閉塞
された医学界のみが提供する療法だけでなく、広くさまざまな方法から、考
え方や方向性も含め自分が納得できるものを選択し、癒しの主体にならなけ
ればいけないと思います。そこには個人個人の人生観や生き方がそれぞれに
あるのですから。この当たり前のことが、ようやく始まりつつあります。

とはいえ、いざ心身ともに本当に弱ってしまうと〜この状態が病気といえる
でしょう〜当の本人は「藁をもつかむ」という心境に陥ってしまいがちです。
そのとき、あまりにも何でもありというのでは、何をどう選ぶべきなのか困
惑し、健康時のような冷静な判断ができないという場合がほとんどなのでは
ないでしょうか。

これからの医療者に望むのは、専門領域を深く探究・実行する専門家として
の存在だけでなく、患者ひとりひとりが医療を選択する際に、さまざまなメ
ニューを提案し、選択をサポートしてくれる信頼できる相談者という役割で
す。
「日本ホリスティック医学協会」は、その意味で大変重要な役割をになって
いると感じます。
今後の活動に大いに注目していきたいと考えています。

次号では、日本ホリスティック医学協会も参加して今年1月に開催された日
本初の「統合医療展」についてレポートします。
                           (後編に続く)

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