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里山の植物で屋上も家庭も緑化

 里山の在来植物を使って、大規模住宅から個人住宅まで緑化できるユニークなシステムが注目されている。都会のヒートアイランド現象を和らげるとともに、過疎化や減反の影響などで荒廃する里山の再生を願う人たちが協力し、ビジネスとして立ち上げた。

 このシステムを開発したのは、景観設計家や種苗家、デザイナーらでつくる「5×緑(ごばいみどり)研究所」(東京都渋谷区 宮崎郁子代表)。河川の護岸工事で使われる金網製の直方体のかご(ユニット)の中に人工土壌を入れ、そこにタンポポやテイカカズラなど日本の里山の植物を生育させる。このユニットをマンションのベランダに置いたり、ユニットを組み合わせて住宅や施設の庭や屋上緑化に利用できる。

 ヒートアイランド対策として、屋上緑化を施したビルは増えたが、緑化植物には安価で手間いらずのセダムなどの外来種が目立つ。しかし、植物は水分を蒸発させる際に気化熱で大気を冷やす役割を果たすため、日照り続きで雨が少ないと休眠してしまう性質を持つセダムによる緑化では、ヒートアイランド現象の緩和効果も薄くなるという。

 これに対して、5×緑のシステムでは高い保水性を備えた軽量の無機質土壌を使うため、通常の雨水だけで植物が健康に育つことができる。5×緑と同じ緑化システムが使われている福岡市中央区の複合施設「アクロス福岡」では、真夏の緑化部分の表面温度が、コンクリート部分よりも最大20度以上低いとの調査結果が出た。

 ユニットには、福島県白河地域の里山やあぜ道に自生する植物を使う。福島県内で種苗園を営む5×緑メンバーの仲田茂司さんによると、地方の田園地帯でも外来種を使った農地造成が進んだ影響で在来種が駆逐され、多様な植生が失われつつあるという。5×緑のシステムは、里山に人の手を入れることで植生を回復させながら地域経済を活性化させると同時に、都会の環境も再生させようとする試みだ。

 このほど東京都内で開かれた商品展示会では、このシステムを使って緑化された個人住宅の見学ツアーも実施。玄関までの通路の両側にさまざまな植物が生育している様子に、参加した建築事務所勤務の女性は「人工的かなと思っていたが、とても自然な仕上がりで驚いた」と感心していた。(2003年9月掲載)

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