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マイクロクレジットで起業支援

 少人数にグループ化した起業家に対して少額の無担保融資などを通じて支援するピアレンディングプログラム(PLP)で成功を収めた銀行がカナダにある。事業計画よりも信用履歴を優先しがちな従来型融資とは異なるユニークな手法が、日本経済停滞の一因ともされる起業の伸び悩みを打破するカギとして関係者の注目を集めている。

 カナダ・バンクーバーにあるバンシティ信用組合。設立当時の1950年代にカナダの金融機関としては初めて女性だけの署名で女性向けに融資する制度を導入するなどの先進的な取り組みで知られ、カナダの「最も働きやすい企業35社」に3年連続で選ばれる優良企業でもある。

 同行のPLPではまず、4〜7人の起業家をグループ化し、それぞれに1000〜5000カナダドル(CD、8万2000〜41万円)をプライムレート+3%の利率で3ヶ月から1年間貸し出す。この際、メンバーは相互に事業計画を評価し合った上で連帯保証人となり、その後は銀行側がグループ内で事業の進捗状況を確認し合ったり、経営指導や各種セミナーを一緒に受講できる機会を毎月1回提供する。

 1992年の開始以来の融資総額は855万CDに達し、返済率も96〜98%という高水準を維持している。ジョンソン副理事長は、PLPの成功を「起業家同士の相互責任と支え合いがうまく機能するシステムになっているためだ」と分析する。

 PLPは、80年代にバングラデシュのグラミン銀行ユヌス総裁インタビューはこちら)が始めて以来世界的に広がったマイクロクレジット(貧困層に数10ドル単位から無担保・低金利で貸し付け、それを元手に事業を始める借り手の経済的自立を促す)が原型だ。バンクーバーのあるブリティッシュ・コロンビア州では、就業人口の98%が中小企業の従業員か自営業者として働いており、起業支援は地域経済にとってはいわば”命綱”。バンシティは、マイクロクレジットにヒントを得たPLPで「地域への貢献がわれわれの成長の源泉」(ジョンソン副理事長)という理念を見事に実現した。

 今年1月末に都内で開かれた起業支援における金融機関の役割を考えるシンポジウムでも、日本の起業家から同行の取り組みに賛意が寄せられた。80年代以降にサービス分野の自営業が増加した先進各国の中にあって、日本の自営業はほぼ一貫して減少、結果として日本経済の活力を削ぐ一因になっているとする見方は根強い。

 「事業が好調な時に限って貨したがり、本当に必要な時には貸してくれなかった」(パネリストの女性起業家)日本の金融機関が、今こそPLPに習う形で起業支援に真剣に取り組むとともに、米国の融資機会均等法(融資審査での性別や年齢などによる差別的扱いの禁止)のように、支援の実効性を上げる法整備も不可欠となっている。(2002年7月掲載)

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