私たちの身体には、かけがえのない大切なものが凝縮されている
ところが「身の程を知る」といっても、現代社会では、そう容易なことではなくなっていると感じます。過剰なものに囲まれて、自分の身体が一体何を本当に心地いいと感じるのか、という基本的なことが、わからなくなっているからです。

自分の「身の程」とは、一体どんなものかと問いかけてみるためには、周辺の過剰なものをいったん遠ざけて、静かに身体の内側を感じてみる必要があります。そうすると実は自分の身体にこそ本来の自然が残っているということに気づきます。そして、自分の身体に命を与えてくれている空気や水や食物やそれにつながる土や風土、自然の営み、太古からの歴史や記憶や智恵やそれらが流れ込んでいる言語というものが自分というものを存在させているかけがえのないものだということに気づきます。いま、もういちど見直すべき大切なものが、実は私たちの身体にはすべて備わっていると感じることができるのです。