きゃりあ・ぷれす

りーだーず・ぷれす
「自分で何かをやりたい」「発信したい」と考える
『きゃりあ・ぷれす』読者による連載コラムです。
各担当者がそれぞれのテーマをに沿って、
思いを綴りながら、自らを成長させていく過程は、
共通の悩み・興味を持つ読者の皆さんにとっても、
共感を持ってお読みいただけると思います。
ご意見やご感想、質問などもお待ちしています。
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トナリノさん
『トナリノ通信』
第5回
賢い消費者を目指して
〜消費は社会に対しての議決権〜
近年、相次ぐ食品偽装や事故米の不正流通、製品による死亡事故、L&Gのような悪質商法事件など、消費者の安全を脅かす事件、事故が後を絶ちません。「消費者庁」関連法案は閣議決定されたものの、その後の進展の様子を見ません。
 私たちの生活は、時代を経て経済発展と共に複雑化、多様化してきています。それに伴い消費者の安全、安心が叫ばれるようになってきました。今、企業、行政、消費者がそれぞれの立場で努力する姿勢が大切であり、消費者においては自分の身は自分で守る気構えを持ち、声を上げていくこと、そして自立した消費者になるための情報と知識をもつことが求められていると思います。
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現在、世界経済が混乱し消費も低迷している中、私たち消費者がとるべき行動には何があるでしょうか。私は、今こそ「賢い消費者」となることが重要だと考えます。賢い消費者とは、値段に惑わされず、「安いから買う、高いからよいものだろう」ではなく、自分自身が必要かどうかで判断する人だと思います。モノが豊富な時代に育った私たちは、たくさんモノがあるところに幸せを感じることは過ぎて、不必要なものは買わないという新しい消費スタイルを確立させるべきです。自分の五感で選択する。いらないモノはいらないと言う。よい商品を自分の判断で選択できる。そのための智慧と情報を持つことが大切です。そういう行動が、長持ちする良い商品を作る企業を育てます。モノづくり日本の消費者の姿でもあると思います。
声を上げる消費者であることも大切な要素です。安全が保障されない遺伝子組み換え食物や、クローン牛・豚の流通には疑問があります。今年1月クローン牛・豚の「食べても危険は特にない」との結論が食品安全委員会から出されました。しかし私たちの子孫までの影響は確認されていません。これまでクローン動物は、死産が多いほか、誕生しても短命であるなど異常が報告されています。安全宣言が出されれば、市場に流通する可能性が高くなることは言うまでもありません。
また、遺伝子組み換え食品に対しても同様、何世代間にも渡って食した場合のデータはまだ出ていません。政府は、農家の事業拡大や生産性向上を理由に挙げていますが、遺伝子組み換え作物反対運動を展開する海外の農民運動のニュースも報道されています。遺伝子組み換え作物は、人間にはまだ未知の食物と考える必要があります。更に分別管理方法の問題も含んでいます。遺伝子組み換え作物の種子が、風に乗ってどこまで飛んでいるのか誰にもわからないのですから。
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一方、自立した消費者を育てるためには、消費者教育も重要です。権利を振り回すような消費者を養成するのが消費者教育ではないと思います。自分たちが消費者の権利をどのように行使すれば、生産者と消費者の良い関係を作ることができ、よい企業を育てることに繋がるかを考えることが大切だと思います。近年の発達した消費社会に出現した「クレーマー」なる消費者も存在します。困ったことに彼らは自分が「クレーマー」だと認識していません。自分の主張は正当だと確信している場合が多いのですから。騙される消費者が悪いのではありません。そこに常識が存在するかどうかだと思います。いったん成立した契約は一方的に取り消しできないことを認識しなければなりません。そのうえで、なにが問題なのかを冷静に判断する必要があるのです。先日社長が逮捕されたL&Gなどの悪質商法に対しては、社会全体で連携して取り組む必要があります。しかし通常の商取引においては自分の消費行動に対して責任をもつ消費者でありたいと思います。
更に、消費者の自立だけで満足してしまうのではなく、一歩進んで社会とどのように関わるかを考えることが大切だと思います。消費を通してよい企業を育てるという考え方を持ちたいものです。企業の経営がコンプライアンスに則っているか、企業が社会的責任を果たしているかなどの視点も不可欠です。
フェアトレードを通して、発展途上国の生産活動を応援するという消費行動もあります。先日「世界が100人の村だったら」の著者である池田香代子氏の講演では、チョコレートにまつわる途上国の働く子どもたちの劣悪な生活環境を聴くことができ、自身の消費行動を見直すきっかけをいただきました。また、環境に配慮した商品を積極的に購入することや、有機栽培をしている生産者に敬意をあらわすことによって、社会や生産者と繋がることができるとも考えられます。賞味期限に振り回される消費者ではなく、自国の食料自給率を踏まえ、食品廃棄を無くす努力や、五感を鍛えておくことも大切なことです。
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製品事故においては、消費者の誤使用に問題がある場合もあり、また視聴率重視の立場でセンセーショナルに報じるマスコミには更に大きな問題があると思います。常にマスコミに振り回されることなく、本質をきちんと見極めることができる資質を身に付け、冷静に行動したいものです。
これらのことを認識している人が、生きる力を持った賢い消費者だと思います。人の世話ができる人間、社会をよくするために行動できる人間、そういう人は企業の中でも力を発揮することができます。そして成熟した経済社会を発展させ、次世代に繋げていくことが私たちの使命だと思います。
「消費」は社会に対しての議決権だと考えています。大切な権利を正しく行使できる賢い消費者でありたいと思います。私たちの消費行動が社会を作っているのですから。